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映画『すべて真夜中の恋人たち』(11月13日公開)を、原作・川上未映子、監督・岨手由貴子、主演・岸井ゆきのの受賞歴とランキングで予習する

2026.10.07

孤独に慣れた校閲者が、年上の物理教師と「光」の話をする。

恋が始まる場面として、これほど静かな入り口も珍しいと思います。川上未映子が2011年に発表した、初めての恋愛小説『すべて真夜中の恋人たち』。その映画版が 2026年11月13日(金)に公開 されます。監督・脚本は『あのこは貴族』の岨手由貴子、主演は、名実とも実力派女優の岸井ゆきの。さらに『すべて真夜中の恋人たち』は今年5月の第79回カンヌ国際映画祭では「ある視点」部門に正式出品され、ワールドプレミアを経て、公開前の時点で海外10か国での配給が決まっています。

原作者、監督、主演。この映画に関わる3人には共通点があります。それぞれの分野の賞を、節目ごとに獲ってきたことです。芥川賞から読売文学賞までを受賞した小説家、商業デビュー作で新藤兼人賞を受けた監督、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を手にした俳優。この記事では、3人の歩みを受賞歴でたどりながら、当サイトの作品ランキングと照らして、映画の予習をしていきます。

映画『すべて真夜中の恋人たち』とは — 校閲者・冬子と物理教師・三束

人との関わりを避け、孤独な日常を送るフリーの校閲者・入江冬子(岸井ゆきの)。高校時代の友人・典子(深川麻衣)、仕事相手の聖(森田望智)とのわずかなつながりだけで暮らす彼女が、ひょんなことから年上の物理教師・三束(浅野忠信)と出会います。きっかけは「光」についての会話。少しずつ交わされる言葉が、冬子の日常をゆっくり変えていく。初めての恋に惹かれていく冬子と、その歩みを揺らす友人の言葉。大人の、ごく静かな恋愛の物語です。

撮影は16mmフィルム、劇中にはショパンの音楽が使われ、語りには松坂桃李が「心の声」という形で参加しています。監督の岨手由貴子にとっては、2021年の『あのこは貴族』以来、約5年ぶりの長編映画です。

項目内容
公開2026年11月13日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開
上映時間139分
監督・脚本岨手由貴子
原作川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』
音楽 / 撮影鈴木正人 / 佐々木靖之
出演岸井ゆきの、浅野忠信、深川麻衣、森田望智、塩野瑛久、中村優子、松坂桃李(語り)
映画祭第79回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門 正式出品

原作: 川上未映子 — 芥川賞から読売文学賞まで、賞と作品が並走してきた15年

川上未映子は1976年、大阪生まれ。歌手としての活動を経て、2007年に『わたくし率 イン 歯ー、または世界』で小説を書き始め、翌2008年には『乳と卵』で第138回芥川龍之介賞を受賞しました。デビューから2年での受賞です。その後も、詩集で第14回中原中也賞(2009)、『ヘヴン』で第20回紫式部文学賞(2010)、『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞(2013)、『夏物語』で第73回毎日出版文化賞(2019)、『黄色い家』で第75回読売文学賞(2023)と、ほぼ一作ごとに主要な文学賞が付いてきた作家です。『ヘヴン』は2022年、英訳版がブッカー国際賞の最終候補にも残りました。

その中で『すべて真夜中の恋人たち』は、2011年に講談社から刊行された、川上にとって初めての恋愛小説です。国内の文学賞とは縁がなかった一方で、海外で評価が広がりました。2022年に英訳『All the Lovers in the Night』(サム・ベット、デイヴィッド・ボイド訳)が出ると、米TIME誌の「2022年の必読書100冊」に選ばれ、全米批評家協会賞の小説部門で日本人として初めて最終候補に入っています。国内の累計発行部数は40万部を超えました。

レビューデータで見る川上未映子

当サイトの川上未映子ランキング(20作品)で、『すべて真夜中の恋人たち』は5位。ただし評価の集まり方が独特です。レビュー件数は6,151件でランキング内で最多なのに、★4以上の「好評」は45%にとどまります。もっとも読まれていて、もっとも評価が割れている作品ということです。芥川賞の『乳と卵』も5,308件に対して好評38%と、同じ傾向を示しています。

一方で上位には、1位に出産と育児をつづったエッセイ『きみは赤ちゃん』(好評84%)、2位に読売文学賞の『黄色い家』、3位に毎日出版文化賞の『夏物語』が並びます。賞を獲った長編が上位にいながら、満足度でいちばん高いのはエッセイ、という結果でした。レビューの声を分析すると、割れ方の中身も見えてきます。『すべて真夜中の恋人たち』で支持されているのは「詩的で繊細な文体が残す余韻」「不器用な人間関係と孤独感の描写」「校閲という職業と主人公像の一致」。一方で「派手な展開がなく淡々としている」「受動的な主人公に共感しづらい」という声が低評価側に集まっています。つまり、静かさそのものが好みを分けている。「読者を選ぶ作家」という川上未映子の評され方が、そのまま数字に出ているランキングです。映画がこの「静かさ」をどう画面に置き換えるかは、見どころのひとつだと思います。

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川上未映子 小説ランキング TOP20

『きみは赤ちゃん』『黄色い家』『夏物語』——ネットの読者の声を分析して選ぶ、川上未映子の作品序列。『すべて真夜中の恋人たち』の位置も。

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監督: 岨手由貴子 — デビュー作で新藤兼人賞、『あのこは貴族』で東京の女たちを描いた

岨手由貴子は1983年、長野県生まれ。大学在学中に撮った短編がぴあフィルムフェスティバルに入選し、長編『マイム マイム』(2007)でも同映画祭で評価を受けた、自主映画出身の監督です。商業映画デビューは2015年の『グッド・ストライプス』。この作品で第20回新藤兼人賞 金賞と、第7回TAMA映画賞 最優秀新進監督賞を受賞しました。

2021年の『あのこは貴族』(原作・山内マリコ、主演・門脇麦と水原希子)は、東京に生まれ育った医師の娘と、地方から上京して慶應を中退した女性、ふたりの人生が一人の男を介して交差する物語でした。第33回東京国際映画祭でプレミア上映され、第13回TAMA映画賞 最優秀作品賞を受賞。2021年のキネマ旬報ベスト・テンでは日本映画の6位に入っています。階層の違う女性ふたりを対立ではなく「ゆるやかな連帯」で結んだ描き方が、この監督の名前を広く知らせました。

レビューデータで見る岨手由貴子

当サイトの岨手由貴子ランキングでは、『あのこは貴族』が15,738件の評価を集めて1位、好評は90%。これは当サイトが集計した監督別ランキングの中でも高い水準です。2位の『グッド・ストライプス』も好評81%と安定していて、作品数こそ少ないものの、支持の厚さがはっきり出ている監督です。

『すべて真夜中の恋人たち』もまた、冬子と聖、冬子と典子という女性同士の関係が物語の片方の軸になっています。『あのこは貴族』で見せた、女性ふたりの距離の描き方が、恋愛小説の映画化でどう生きるか。『あのこは貴族』を観ている人ほど、楽しみ方が増える一本だと思います。

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岨手由貴子 監督作品ランキング

『あのこは貴族』『グッド・ストライプス』——ネットの視聴者の声を分析して選ぶ、岨手由貴子の監督作。

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主演: 岸井ゆきの — 『愛がなんだ』の新人賞から、『ケイコ 目を澄ませて』の最優秀主演女優賞へ

岸井ゆきのは1992年、神奈川県生まれ。高校時代に山手線の車内でスカウトされ、2009年のドラマ『小公女セイラ』でデビューしました。映画で広く知られるようになったのは2019年の『愛がなんだ』(今泉力哉監督)。報われない恋に全部を注ぐテルコを演じ、翌2020年の第43回日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞しています。

そして2022年の『ケイコ 目を澄ませて』(三宅唱監督)。耳の聞こえないプロボクサーを演じたこの作品で、第46回日本アカデミー賞 最優秀主演女優賞、第77回毎日映画コンクール 女優主演賞、第96回キネマ旬報ベスト・テン 主演女優賞、第45回ヨコハマ映画祭 主演女優賞と、2023年の主要な映画賞の主演女優賞をほぼ総なめにしました。2026年には『佐藤さんと佐藤さん』で第35回日本映画批評家大賞 主演女優賞も受賞しています。

レビューデータで見る岸井ゆきの

当サイトの岸井ゆきのランキング(20作品)では、1位が31,646件の評価を集めた『愛がなんだ』(好評80%)、2位が『ケイコ 目を澄ませて』(10,939件・好評90%)。3位の『アット・ザ・ベンチ』(2024)は好評95%と、ランキング内でもっとも満足度の高い作品です。4位『神は見返りを求める』、8位『佐藤さんと佐藤さん』(好評88%)と、2020年代の主演作がまんべんなく上位に入っています。

レビューの声も、この配役の意味を裏づけています。『ケイコ 目を澄ませて』で最も多く挙がっているのは「台詞に頼らない表情と所作の演技」、次いで「劇伴を排した生活音中心の演出」と「16mmフィルムの質感」。一方『愛がなんだ』は「片思いや執着の感情のリアルさ」が支持される半面、「主人公に感情移入できない」「恋愛経験で刺さり方が変わる」と、観る人を選ぶ作品として受け取られています。

面白いのは、1位の『愛がなんだ』が恋愛映画だということです。恋に振り回される側のテルコで名前を知られた俳優が、7年後、人との関わりを避けてきた校閲者・冬子として、ごく静かな恋の始まりを演じる。しかも『すべて真夜中の恋人たち』も16mmで撮られています。『ケイコ』で評価された、台詞に頼らない演技がどう効くか。この配役自体が、映画の方向性を語っているように見えます。

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岸井ゆきの 出演映画ランキング TOP20

『愛がなんだ』『ケイコ 目を澄ませて』『アット・ザ・ベンチ』——ネットの視聴者の声を分析して選ぶ、岸井ゆきののベスト出演作。

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3つのランキングが交差する場所

原作者、監督、主演のランキングを並べると、この映画がどんな場所に立っているかが見えてきます。

  • 原作は、川上未映子の作品の中でもっとも読まれ、もっとも評価が割れている小説。
  • 監督は、前作で 好評90% という、当サイトの監督別ランキングでも高い支持を得ている。
  • 主演は、恋愛映画でブレイクし、静かな演技で主演女優賞を総なめにした俳優。

割れる原作を、支持の厚い監督と俳優が引き受ける。カンヌ「ある視点」部門での反応を見る限り、その組み合わせは海外では既に答えが出始めているようです。日本での答えは11月13日から。公開後は、当サイトの3つのランキングに『すべて真夜中の恋人たち』の評価がどう入ってくるかも、追いかけていきます。

まとめ

  • 映画『すべて真夜中の恋人たち』は2026年11月13日公開、139分。監督・脚本は岨手由貴子、主演は岸井ゆきの、共演に浅野忠信。第79回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に正式出品。
  • 原作者・川上未映子は第138回芥川賞(『乳と卵』)、紫式部文学賞、谷崎潤一郎賞、毎日出版文化賞、第75回読売文学賞(『黄色い家』)を受賞。原作は英訳が全米批評家協会賞の最終候補、TIME誌の必読書100冊に。
  • 当サイトの川上未映子ランキングで原作は5位。レビュー6,151件は最多だが好評45%と、もっとも評価が割れた作品。
  • 岨手由貴子は『グッド・ストライプス』で新藤兼人賞 金賞、『あのこは貴族』でTAMA映画賞 最優秀作品賞。『あのこは貴族』は監督ランキング1位、好評90%。
  • 岸井ゆきのは『愛がなんだ』で日本アカデミー賞 新人俳優賞、『ケイコ 目を澄ませて』で最優秀主演女優賞ほか2023年の主演女優賞を総なめ。ランキング1位は『愛がなんだ』、満足度最高は『アット・ザ・ベンチ』(好評95%)。

参考: 映画『すべて真夜中の恋人たち』公式サイト、各受賞歴は主催団体の発表および公開情報に基づく。