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DATA-DRIVEN NOVEL RANKING

村上 春樹

独自に収集した評価データで選ぶ、"本当に愛されている小説"のランキング

PROFILE

京都府京都市伏見区生まれ、兵庫県西宮市・芦屋市育ちの小説家・翻訳家。早稲田大学在学中にジャズ喫茶を経営し、1979年に『風の歌を聴け』で群像新人文学賞を受賞してデビュー。平易で親しみやすい文体と難解な物語構造を組み合わせた独自の作風で知られ、現実世界から非現実の異界へシームレスに移動する語り口が特徴とされる。1987年発表の『ノルウェイの森』は上下巻合計1300万部を超えるベストセラーとなり国民的作家の地位を確立。その後も『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』などを発表し続けている。作品は50か国語以上に翻訳され、2006年にはフランツ・カフカ賞をアジア圏で初めて受賞するなど国際的な評価も高い。翻訳家としてもレイモンド・カーヴァーやスコット・フィッツジェラルドらの作品を日本に紹介し、エッセイやノンフィクション分野でも精力的に活動している。

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ランキング

11Q84

1Q84

2009年刊行

17,205pt

TOTAL SCORE

「1Q84年、私はこの新しい世界をそのように呼ぶことにしよう」。ヤナーチェックの交響曲が流れる中、首都高速の非常階段を降りた瞬間から、青豆は気づいていない世界へと足を踏み入れる。夜空には月が二つ浮かび、見知った1984年はもうどこにも存在しない。一方、予備校講師の天吾は、謎めいた少女ふかえりが書いた小説の改稿に手を貸したことで、宗教集団さきがけとリトル・ピープルという見えない力に巻き込まれていく。幼い頃に一度だけ触れた手の記憶を胸に、二人は互いを知らないまま同じ歪んだ世界を生きている。ハードボイルド、SF、サスペンス、そして純愛と、あらゆる要素が絡み合いながら「絡まった糸の端と端のように」二人の運命は引き寄せられていく。謎は謎のまま残り続けるが、読者の多くが口を揃えて言う。「夢中になって読んじゃった」と。全三部作、壮大な村上ワールドの深い森へ、ぜひ迷い込んでほしい。

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絶賛7,924
好評13,595
普通9,099
不評1,708
酷評447

TOTAL 32,773 reviews

2ノルウェイの森

ノルウェイの森

1987年刊行

16,812pt

TOTAL SCORE

飛行機がハンブルク空港に着陸する瞬間、天井のスピーカーから流れるビートルズの名曲。その旋律が、主人公ワタナベに1969年の記憶を鮮烈に呼び起こす。自らの命を絶った親友キズキ、その恋人である繊細な直子、そして生命力にあふれる同学部の緑。喪失と再生をめぐる、三者三様の関係が静かに、しかし確実に交差していく。あらゆる物事と自分のあいだに距離を置こうとするワタナベの姿勢は、死の影が常にちらつく日常のなかで少しずつ揺らいでいく。読者からは「生と死と性、この表現以外思いつかない」という声があがり、「死は生の対極にあるのではなく、我々の生のうちに潜んでいるのだ」という言葉が深く刻まれると評される。重苦しいテーマでありながら、時折ユーモアさえ感じさせる文体と、会話のリズムが絶妙に絡み合い、ページはいつしかするすると進んでいく。喪失と向き合い、それでも生きることを選ぶ人間の姿を、淡々とせつないまでに描いた百パーセントの恋愛小説。

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絶賛9,637
好評11,123
普通16,178
不評2,589
酷評900

TOTAL 40,427 reviews

3海辺のカフカ

海辺のカフカ

2002年刊行

15,456pt

TOTAL SCORE

「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」。その言葉を胸に、少年は誕生日の夜、夜行バスに乗り込み見知らぬ四国の街へと向かう。父から告げられた呪いのような予言から逃れようとしながらも、図書館という小さな世界に居場所を見つけ、様々な人々と出会い、少年はゆっくりと変わっていく。一方、猫と言葉を交わすことができる老人ナカタさんもまた、何かに引き寄せられるように西へと旅を続ける。一見交わることのない二つの物語は、やがて四国の地で静かに交差する。現実と異界が溶け合い、時間や距離の概念さえも曖昧になっていく世界で、謎のキーワードが二人を深い闇へと引き込んでいく。「意味があるようで意味が曖昧なイメージが連続する」、この物語は、読み解けるかではなく、それでも読み続けるかを問いかけてくる。無数のメタファーと交錯する世界が織りなす、喪失と再生の壮大な長編小説。

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絶賛7,151
好評8,507
普通12,143
不評1,357
酷評368

TOTAL 29,526 reviews

4世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

1988年刊行

15,411pt

TOTAL SCORE

高い壁に閉ざされた幻想の街で、一角獣の頭骨から夢を読む男の物語と、老科学者によって意識の核に秘密の思考回路を埋め込まれた計算士の冒険活劇。まったく異なる二つの物語が章ごとに交互に展開し、静寂な幻想世界と波瀾万丈のスリラーが奇妙な緊張感で共鳴し合う。やがて読者は気づく。この二つの世界が、一人の人間の意識と無意識として深く結びついていることに。残された時間はわずか。永遠の生か、消滅か。そして壁に囲まれた街から脱出できるのか。謎が謎を呼ぶ静かな高揚感の中、物語は驚くべき結末へと向かう。村上春樹の難解さに苦手意識を持つ人ほど、良い意味で期待を裏切られる一作であり、谷崎潤一郎賞を受賞した記念碑的長編。自我とは何か、心とは何か、そして世界には言葉に変えることのできない哀しみがあって、人はその中で生き続けるしかないという問いが、静かに深く刺さってくる。

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絶賛6,933
好評5,228
普通6,724
不評524
酷評110

TOTAL 19,519 reviews

5ねじまき鳥クロニクル

ねじまき鳥クロニクル

1994年刊行

13,532pt

TOTAL SCORE

仕事を辞め、家事をこなしながら日々を送る主人公オカダ。ある日、飼い猫が姿を消し、続いて妻クミコまでもが突然いなくなる。静かな郊外の住宅街から始まる物語は、謎めいた電話、不思議な能力を持つ女たちの登場とともに、現実と非現実の境界を溶かしながら深みへと引き込んでいく。「主人公の世界が狭くなればなるほど、奇妙なものごとや奇妙な人々で満ちて溢れてくる」という作中の一文が、この物語の本質を鋭く言い当てている。舞台は1980年代の東京から、かつてのノモンハン事件が刻まれた満州の戦場まで縦横無尽に広がり、時代と意識の層をまたいで展開する。井戸の底という内面世界への降下、顔のない男、そして宿敵となる綿谷ノボルとの対決。「ひとりの人間が、他のひとりの人間について十全に理解することは可能なのか」という問いを胸に、オカダは地図のない旅を続ける。謎はすべて解かれるわけではなく、読後には「悪くない読後感が不思議と理解できたように感じさせてくれた」という感覚が残る、唯一無二の長編作品。

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絶賛5,267
好評6,235
普通10,270
不評842
酷評213

TOTAL 22,827 reviews

6羊をめぐる冒険

羊をめぐる冒険

1982年刊行

11,728pt

TOTAL SCORE

妻が去り、耳専門のモデルである女性と新たな関係を築き始めた僕のもとに、ある日一通の手紙が届く。消印は北海道。姿を消した旧友、鼠からの便りだった。封筒に同封されていたのは、羊の群れを写した一枚の写真。その中にひっそりと写り込んだ、背中に星形の斑紋を持つ一頭の羊が、すべての始まりだった。謎めいた右翼の大物の秘書に脅迫された僕は、その羊を探し出すよう命じられる。断れば会社は消える。かくして僕は美しい耳を持つ彼女とともに、北海道の奥地へと向かう。まるで探索のような、逃避行のような旅の果てに待ち受けていたのは、恐ろしい事実だった。現実と幻想が溶け合う独特の村上ワールドを舞台に、喪失、弱さ、そして友情の行方が静かに描かれる青春三部作の完結編。最後に流れる涙の意味を、ぜひその目で確かめてほしい。

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絶賛3,860
好評4,002
普通5,449
不評376
酷評81

TOTAL 13,768 reviews

7ダンス・ダンス・ダンス

ダンス・ダンス・ダンス

1988年刊行

10,441pt

TOTAL SCORE

失われた心の震えを取り戻すために、「僕」は喪失と絶望の世界を旅する。舞台は雪降りしきる札幌から、渋谷の雑踏、ホノルルのダウンタウンへ。羊男、13歳の美少女、片腕の詩人、映画スター、そして高級娼婦。魅力的な登場人物たちが次々と現れ、「先の展開が全然予想できない」物語が加速していく。「この世界ではなんでも起こりうるんだよ。なんでも。」という言葉が示す通り、現実と幻想の境界は曖昧に溶け合い、いくつかの命が失われる事件も起きる。バブル前夜、高度資本主義社会に飲み込まれながらも、「嫌でもなんでも踊り続けてなんとか現実を生きろ」という羊男のメッセージが静かに響く。生きづらさを感じながらも歩み続ける人々の魂を、闇と光の交錯で鮮やかに描いた作品。「踊り続けることで自分だけの場所へきっと辿り着ける」というメッセージが、読む者の胸に深く刻まれる。

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絶賛3,038
好評2,985
普通4,167
不評216
酷評60

TOTAL 10,466 reviews

8色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

2013年刊行

9,388pt

TOTAL SCORE

鉄道の駅を設計するという仕事に生きがいを見出す36歳の男、多崎つくる。彼の人生には、20歳のときに受けた深い傷が、16年後もなお血を流し続けている。名古屋の高校時代、アオ、アカ、シロ、クロと呼ばれる4人の親友と完璧な調和を築いていたつくるは、大学2年のある日、突然かつ一方的に絶縁を言い渡された。理由も告げられないまま。死ぬことだけを考えて過ごした時期を経て、漂うように生きてきた彼は、恋人の沙羅に促され、ついに過去と向き合う巡礼の旅へと踏み出す。名古屋から、そして遠くフィンランドのヘルシンキへ。旧友たちとの再会で明かされる真実、そしてひとりは既にこの世を去っていた。過去を直視する巡礼の旅は、自分を再構築するための通過儀礼だ。色彩が皆無な人間など、この世界には存在しないのかもしれない、という問いかけが静かに響く、喪失と再生の物語。

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絶賛2,746
好評4,232
普通3,068
不評732
酷評254

TOTAL 11,032 reviews

9風の歌を聴け

風の歌を聴け

1979年刊行

8,959pt

TOTAL SCORE

群像新人賞を受賞した、著者のデビュー作です。一九七〇年の夏、海辺の街に帰省した大学生の僕は、行きつけのバーで友人の鼠とビールを飲み、偶然知り合った女の子と過ごしながら、ゆるやかに夏の終わりへと向かっていきます。大きな事件は起きません。ただ、会話があり、音楽があり、そして人との出会いと別れがある。それだけなのに、読み終えたあとに確かな重みと切なさが残ります。物語の冒頭に刻まれた一節、完璧な文章などといったものは存在しない、完璧な絶望が存在しないようにね、という言葉が、この作品全体の空気を静かに支えています。乾いた軽快な文体の底に、内面へと向けられた鋭い眼差しが潜む、と選考委員に評された筆致は、デビュー作にして著者の世界観が全開です。答えを急がず風景や空気を味わうように読む一冊であり、何度読み返しても予期せぬ発見があると語る読者も少なくありません。初期三部作の第一作として、著者の原点がここに刻まれています。

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絶賛2,908
好評2,977
普通4,841
不評839
酷評239

TOTAL 11,804 reviews

10走ることについて語るときに僕の語ること

走ることについて語るときに僕の語ること

2007年刊行

8,863pt

TOTAL SCORE

専業小説家として生きる決意を固めた1982年の秋、彼は走り始めた。それ以来25年以上にわたり、世界各地でフルマラソン、100キロウルトラマラソン、トライアスロンを走り続けてきた。本書は、その軌跡をたどりながら、創作の秘密と自分自身の内面を初めて正面から綴ったメモワールである。「小説を書くことは、フルマラソンを走るのに似ている」という言葉が示すように、走ることと書くことは彼の中で分かちがたく結びついている。「痛みは避けられないけど、苦しむかどうかは自分で選べる」という言葉や、「空白を獲得するために走っている」という告白は、単なるスポーツの記録を超えて、一人の人間が自分と向き合う哲学的な問いへと読者を誘う。人との勝ち負けではなく、自分自身と対峙し続ける生き方、まさにランナーであり小説家である著者の生き様が、比喩表現豊かな文章で綴られた一冊である。

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絶賛2,198
好評1,588
普通982
不評107
酷評33

TOTAL 4,908 reviews

11騎士団長殺し

騎士団長殺し

2017年刊行

8,586pt

TOTAL SCORE

妻に別れを告げられた三十六歳の肖像画家が、海を望む山荘に孤独を抱えて移り住むところから物語は始まる。屋根裏に隠された一枚の絵、真夜中に響く鈴の音、雑木林の奥に眠る謎の石室。やがて、絵の中から身長六十センチの存在が「イデア」として現れ、静謐だったはずの日々は一変する。「事実が妄想を吹き消すとは限らんぜ」。そんな言葉を残す不思議な来訪者、そして謎めいた銀髪の隣人が加わることで、物語は現実と異界が交差する深い森へと踏み込んでいく。絵画を通して人の心の深部を探るユング的な構造を持ちながら、イデアとメタファーという哲学的な問いを軸に、失われたものを取り戻すための孤独な闘いが描かれる。

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絶賛1,931
好評3,354
普通2,305
不評344
酷評104

TOTAL 8,038 reviews

12スプートニクの恋人

スプートニクの恋人

1999年刊行

7,668pt

TOTAL SCORE

22歳の春、すみれは生まれて初めて恋に落ちた。広大な平原を突き進む竜巻のような、みごとに記念碑的な恋だった。相手は17歳年上の既婚女性。そのすみれを密かに想う小学校教師のぼくを交え、三者三様の感情が交差する。やがてすみれはギリシャの小島から突然姿を消し、物語は現実と非現実の境界が曖昧になる領域へと踏み込んでいく。登場人物たちはそれぞれの孤独を抱え、まるで地球の引力だけを絆として宇宙を漂う人工衛星のように、すれ違い、めぐり会い、また別れていく。喪失と不在、こちらの世界とあちらの世界。理解というものはつねに誤解の総体に過ぎない、という言葉が静かに響く、この世のものとは思えない奇妙なラブストーリー。

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絶賛1,755
好評2,537
普通4,141
不評458
酷評126

TOTAL 9,017 reviews

13女のいない男たち

女のいない男たち

2014年刊行

7,380pt

TOTAL SCORE

6人の男たちが、それぞれの形で女性を失った後の世界を描く6篇の短編集。亡き妻の記憶に苛まれ続ける舞台俳優、妻に去られバーを営むうちに怪しい気配に追われる男、富があっても埋まらない孤独を抱えた美容外科医。「喪失感を抱えた男たちの姿が辛く、ハッピーエンドになりようのない作品ばかりなんですが、何故かすんなり読めてしまう」という読者の言葉が示すように、重いテーマでありながら独特のリズムで読者を引き込む。各篇は独立しながらも互いに響き合い、著者自身がビートルズやビーチ・ボーイズのアルバムになぞらえた緊密な構成を持つ。明確な答えを与えず、読む者それぞれの解釈と余韻に委ねる、奥行きのある一冊。

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絶賛1,826
好評2,598
普通2,439
不評578
酷評162

TOTAL 7,603 reviews

14国境の南、太陽の西

国境の南、太陽の西

1992年刊行

7,148pt

TOTAL SCORE

ジャズの流れる上品なバーを営み、妻と二人の娘に囲まれ、絵に描いたような幸福な日々を送る男。しかし、12歳の頃にひそかに心を通わせた同級生の女性が突然その前に現れたとき、満たされているはずの日常に潜む欠落感が静かに顔を覗かせる。「美しい想い出という呪い」とも言えるその再会は、やがて男を本能と理性の狭間へと引き込んでいく。一見するとリアルな不倫の物語でありながら、再会した女性が実体ある存在なのか、それとも幻なのか、その境界線はどこまでも曖昧に揺れ続ける。喪失と再生、そして自分の中の闇と真摯に向き合う物語は、読むたびに異なる顔を見せると評する読者も多い。

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絶賛1,600
好評1,857
普通2,872
不評318
酷評96

TOTAL 6,743 reviews

15東京奇譚集

東京奇譚集

2005年刊行

6,461pt

TOTAL SCORE

大切なものを突然に奪われた人々が、都会の片隅で迷い込む、偶然と驚きに満ちた世界を描く5つの短編集。孤独なピアノ調律師が見知らぬ女性との奇妙な一致から絶縁していた家族と向き合う物語、息子を海で失った母親がその後の人生を静かに生き続ける物語など、現実と非現実の境界が溶け合う世界が広がる。「日常の裂け目に潜む深淵を覗くような読後感」と読者が語るように、論理では説明できない出来事が淡々とした筆致で描かれる。名前を忘れてしまう恐怖、突然姿を消した夫の謎、そして人語を解する猿との対話。見慣れた世界のすぐ隣に潜む不可思議な運命が、静かに、しかし確かに読む者の心に刺さる一冊。

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絶賛1,164
好評1,850
普通2,665
不評298
酷評49

TOTAL 6,026 reviews

161973年のピンボール

1973年のピンボール

1980年刊行

6,262pt

TOTAL SCORE

「全ては通り過ぎる」、読者はそう評する。翻訳事務所を営む僕の日常に、ある日ふたりの双子の女性が住みつき、奇妙な共同生活が始まる。一方、故郷の街に留まり続ける鼠は、出口を見つけられないまま孤独とビールの日々を送っている。僕と鼠、ふたりの視点が交互に描かれながら、青春という季節の終わりへと静かに向かっていく。過去の記憶と決別するための儀式として、配電盤やピンボールマシンが象徴的に物語に絡みつき、乾いた文体の奥に深い喪失感と再生への予感を滲ませる。鼠三部作の第二作であり、デビュー作から続く世界観がここで一つの区切りを迎える。

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絶賛1,360
好評1,638
普通3,103
不評459
酷評110

TOTAL 6,670 reviews

17神の子どもたちはみな踊る

神の子どもたちはみな踊る

2000年刊行

6,118pt

TOTAL SCORE

大地は裂け、日常は一瞬にして奪われた。阪神淡路大震災をモチーフに紡がれた六つの短編が、互いに静かに共鳴し合う連作集。釧路のラブホテルで出会う謎めいた女、焚き火の前で言葉を交わす見知らぬ男たち、地底の怪物と闘うために現れる巨大なかえるくん。どの物語の主人公も、震災の直接的な被害者ではない。しかし誰もが、震災よりずっと前から内なる廃墟を抱えていた。村上ワールド全開の幻想的な筆致でありながら、そこに描かれるのは普遍的な喪失と、かすかな再生の予感。頭で理解するより、心で感じる読書体験が待っている。

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絶賛1,078
好評1,605
普通2,597
不評253
酷評66

TOTAL 5,599 reviews

18街とその不確かな壁

街とその不確かな壁

2023年刊行

5,615pt

TOTAL SCORE

十七歳の夏の夕暮れ、川べりで少女が語り始めた高い壁に囲まれた謎めいな街。そこには影を持たない人々が暮らし、図書館では古い夢が静かに眠り続けている。魂を揺さぶる純度百パーセントの村上ワールドと称されるこの物語は、幻想と現実の境界線が溶け合う三部構成の長編小説。第一部でその神秘的な街への旅を描いた後、第二部では中年を迎えた主人公が会津の山間に佇む図書館に職を得て、幽霊となった前館長や謎の少年と出会う。読者からは、あぁ村上春樹を読んだなあ、と十分に思わせてくれる集大成との声が届けられている。真実とは定まった静止の中にではなく、不断の移行する相の中にある、という著者自身の言葉が、この物語の本質を静かに照らし出す。

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絶賛944
好評1,260
普通839
不評152
酷評63

TOTAL 3,258 reviews

19遠い太鼓

遠い太鼓

1990年刊行

5,606pt

TOTAL SCORE

ある朝、遠くから微かに聞こえてくる太鼓の音に誘われるように、四十歳を前にした著者は日本を後にし、ギリシャとイタリアへと旅立つ。1986年から1989年にかけての三年間、根無し草のような生活を送りながら、代表作となる長編小説を書き上げた。錨を下ろした土地の色を鮮やかに映し出し、食が踊るマーケット、異文化とのアクシデント、個性豊かな人々との出会いをユーモアたっぷりに綴る。作家としての転換期を記した、滞在記でありながら深い内省に満ちた一冊。

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絶賛959
好評650
普通773
不評57
酷評23

TOTAL 2,462 reviews

20もし僕らのことばがウィスキーであったなら

もし僕らのことばがウィスキーであったなら

1999年刊行

5,105pt

TOTAL SCORE

ウィスキーの聖地を求めて、スコットランドのアイラ島とアイルランドを巡る旅のエッセイ。蒸留所を訪ね、パブをはしごしながら、シングルモルトと土地の人々の暮らしに深く向き合う。読者からは「次回ウィスキーを飲むとき、グラスに満たされるのは村上氏のことばだ」という声も寄せられている。妻・陽子さんが撮影した写真が文章に寄り添い、磯の香りさえ漂ってくるような旅情を呼び起こす。うまい酒は旅をしない。その土地に足を運んでこそ得られるものを、芳醇かつ静謐な筆致で綴った一冊。

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絶賛780
好評718
普通828
不評70
酷評22

TOTAL 2,418 reviews

21猫を棄てる 父親について語るとき

猫を棄てる 父親について語るとき

2020年刊行

5,035pt

TOTAL SCORE

父と一緒に猫を海岸へ棄てに行った、ある夏の午後の記憶。ところが家に帰ると、その猫が玄関で二人を出迎えていた。この不思議なエピソードを起点に、著者は長年疎遠だった父の人生をたどっていく。寺の次男として生まれ文学を愛した父は、中国での過酷な戦争体験を経て生き延びた。その偶然の積み重ねがなければ、著者自身もこの世に存在しなかった。父から受け継いだ記憶と体験は、著者の多くの作品に静かに息づいている。「おそらく僕らはみんな、それぞれの世代の空気を吸い込み、その固有の重力を背負って生きていくしかないのだろう。」二匹の猫が象徴する生と喪失、そして父と子をつなぐ細い糸。著者が初めて自らのルーツと正面から向き合った、珠玉のノンフィクション。

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絶賛879
好評771
普通713
不評137
酷評60

TOTAL 2,560 reviews

22カンガルー日和

カンガルー日和

1983年刊行

5,010pt

TOTAL SCORE

デビューから間もない初期に生み出された、18篇の掌編を収めた短編集。カンガルーの袋に入ることへの憧れを語る表題作や、100パーセントの女の子とすれ違った後悔を綴る物語など、日常の片隅にそっと異質な何かが滑り込む。吸血鬼やあしか祭り、深夜の鏡に映る自分の影まで、不思議な存在が登場しながらも登場人物は誰もが至って平然と振る舞う。まさに白昼夢の記録のように、あり得ないことをあり得ないまま描き切る独特の筆致が光る。随所に挟まれる食べ物の描写は、読むたびに美味しそうと感じさせると評判で、締めくくりを飾る図書館奇譚では不穏な世界観が一気に加速し、読者を奇妙な緊張感へと引き込む。

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絶賛758
好評877
普通1,642
不評132
酷評33

TOTAL 3,442 reviews

23一人称単数

一人称単数

2020年刊行

4,995pt

TOTAL SCORE

音楽、短歌、野球、そして言葉を失った名前。人生のある分岐点に残された記憶の断片を、鋭くも柔らかな視線で拾い集めた、全8編の短篇集。ビートルズのレコードを抱えた少女、外周を持たない不思議な円の話、女性の名前を盗む年老いた猿の告白。現実と幻想の境界が溶け出すような物語が次々と展開されます。エッセイとも私小説とも判断しかねる不思議なリアリティに引き込まれ、読み終えてもなお、何かが心にひっかかり続けます。単眼で切り取られた世界が複眼へと絡み合うとき、私はもう私でなくなっていく。

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絶賛1,096
好評1,288
普通1,423
不評417
酷評174

TOTAL 4,398 reviews

24アンダーグラウンド

アンダーグラウンド

1997年刊行

4,994pt

TOTAL SCORE

1995年3月20日、何の変哲もない月曜の朝、東京の地下で起きた無差別テロ。オウム真理教による地下鉄サリン事件を、著者は62人もの被害者や遺族への丹念なインタビューによって記録したノンフィクションの大作です。事件当時の報道がオウム側の人間像ばかりを掘り下げる一方で、被害者たちは「顔のない善良な市民」として一括りにされていた、そんな問題意識がこの作品を生み出しました。それぞれ異なる生い立ち、職業、そして事件への思い。ひとりひとりの証言が積み重なることで、惨事の全体像が立体的に浮かび上がります。読者からは「2日で一気読み」「読んでいて思わず涙が出た」という声が多く寄せられており、700ページを超える重厚な記録でありながら、ページを繰る手が止まらない一冊です。

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絶賛826
好評671
普通993
不評107
酷評37

TOTAL 2,634 reviews

25アフターダーク

アフターダーク

2004年刊行

4,902pt

TOTAL SCORE

深夜零時直前、都会のファミレスで一人本を読む女性・マリと、彼女に声をかける男性の出会いから物語は幕を開ける。時を同じくして、二ヶ月以上眠り続ける姉・エリの存在が、現実と夢の狭間に静かな緊張を生む。まるで映画のカメラが俯瞰するような独特の語り口で、ラブホテルで働く個性的な女性たち、謎めいた人物・白川、そして姉妹を隔てる見えない深淵が描かれる。「ほぼ何も起きない話を、ここまで読ませる手腕」と読者を唸らせる筆致で、夜明けまでのわずか七時間に都会の孤独と人々の交差が凝縮される。暗闇の中に灯るような温かさと、拭いきれない不気味さが同居する一夜の物語。

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絶賛1,062
好評1,993
普通4,865
不評1,073
酷評304

TOTAL 9,297 reviews

26レキシントンの幽霊

レキシントンの幽霊

1996年刊行

4,830pt

TOTAL SCORE

古い屋敷で夜中に開かれる幽霊たちのパーティー、椎の木の根元から現れる緑色の獣、氷でできた男と結婚した女が向かう南極。七つの短編に共通するのは、日常のすぐ隣に口を開ける「底なしの怖さ」です。読者からは「皮膚の内側がざわざわするような感覚」と評される不安感が全編を貫き、孤独と喪失が繊細な筆致で描かれます。「沈黙」では付和雷同する群衆の恐ろしさが、「七番目の男」では恐怖に背を向けることの代償が、静かに、しかし確実に読む者の心へと迫ってきます。不思議でほの暗い世界でありながら、読後感は不思議と悪くない。それがこの短編集の最大の魅力といえるでしょう。

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絶賛657
好評1,021
普通1,928
不評186
酷評26

TOTAL 3,818 reviews

27夏帆 The Tale of KAHO

夏帆 The Tale of KAHO

2026年刊行

4,704pt

TOTAL SCORE

「正直いって、君みたいな醜い相手は初めてだよ」という、初対面の男からの衝撃的な一言から物語は動き出す。26歳の絵本作家・夏帆は、怒りよりもショックよりも、ただ純粋に驚いた。女性を主人公にした初の長編小説であり、人間の言葉を話すアリクイ夫婦、ジャガー、シロアリの女王など、現実とはほんの少しずれた存在たちが次々と夏帆の日常へ侵食してくる。気づけば奇妙な世界に引き込まれ、ページをめくる手が止まらない。母と娘の親子関係という普遍的な葛藤を軸に据えながら、現実と幻想の境界線が溶け合う独自の世界観は健在で、「意味を探すよりも身を委ねたほうが何倍も面白い」と評されるのも頷ける。善なるものと悪しきものが交錯する中、夏帆は自分自身の物語の出口を見つけられるのか。

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絶賛731
好評581
普通366
不評75
酷評44

TOTAL 1,797 reviews

28螢・納屋を焼く・その他の短編

螢・納屋を焼く・その他の短編

1984年刊行

4,456pt

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七つの短編に宿るのは、もう戻らない時間のまなざし、語らい、想い、そして痛みだ。代表作の原点となった「蛍」では、喪失と孤独を抱えた青年の静かな夜が描かれ、物語の枠外に広がる余韻が深く尾を引く。「納屋を焼く」では、不条理で不穏な空気のなか、謎めいた男の告白が読む者の想像力を静かにかき乱す。「踊る小人」は完全なファンタジーでありながら薄気味悪く、「めくらやなぎと眠る女」はシュールな浮遊感に満ちている。劇的な事件が起きるわけではない、しかし読んだ後にずっと尾を引き続ける何かがある。それこそが村上春樹の最大の武器であり、初期作品ならではのみずみずしさが全編に漂う一冊だ。

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29村上春樹、河合隼雄に会いにいく

村上春樹、河合隼雄に会いにいく

1996年刊行

4,248pt

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作家と心理療法家が、深夜の対談のように語り合う一冊。人間にとって物語とは何か、という根源的な問いを軸に、恋愛、家族、暴力、そして社会の歪みまで、話題は縦横に広がる。「小説を書くのは自己療法的な行為」という告白や、戦後日本が暴力性を抑圧したまま歩んできた代償への考察は、読む者の内側に静かに響く。箱庭療法の深淵から人間を見つめる河合隼雄と、物語の迷宮から現実を問い直す著者が、互いの言葉を丁寧に掘り下げながら、個が独自の物語を生きることの意味へとたどり着く。

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30職業としての小説家

職業としての小説家

2016年刊行

4,233pt

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デビュー作の執筆から始まり、長編小説の書き方、文学賞への独自の見解、オリジナリティとは何かという問いまで、一人の小説家が自らの言葉で語り尽くした自伝的エッセイ。毎日決まった分量を書き続け、一日一時間のランニングを三十年以上欠かさないというストイックな創作姿勢は、読者に本物のプロフェッショナルの姿を見せてくれる。小説とはどこまでも個人的でフィジカルな営みだという信念のもと、深い井戸の底に一人で座るような孤独な作業を通じて、いかに物語が生まれるのかが具体的に描かれる。故・河合隼雄氏との出会いや、海外での新たなフロンティアを切り拓いた体験も収められ、小説家としての生きる姿勢とアイデンティティが余すところなく刻印された一冊。

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31小澤征爾さんと、音楽について話をする

小澤征爾さんと、音楽について話をする

2011年刊行

4,195pt

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世界的指揮者と小説家が、ともにレコードに耳を傾けながら語り合う、一年間にわたる対話の記録。グレン・グールドやバーンスタイン、カラヤンとの交流や、ベートーヴェン、ブラームス、マーラーをめぐる音楽論が、率直な言葉で紡がれていく。指揮者はタクトを振るように語り、小説家は心の響きを聴くように書きとめる。異なる立ち位置の二人の対話だからこそ、かえって芳醇なハーモニーが生み出される対談集。クラシックに詳しくない読者でも、音楽と言語が溶け合う独特の語り口に引き込まれ、話題に上がる演奏を聴きながら再読したくなる一冊。

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32回転木馬のデッド・ヒート

回転木馬のデッド・ヒート

1985年刊行

4,013pt

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人生とは、メリー・ゴーラウンドに似ている。定まった場所を定まった速度で巡回するだけで、どこにも行けず、降りることも乗り換えることもできない。そんな鮮烈なテーゼのもと、都会に生きる人々の奇妙な日常を切り取った8つのスケッチが収められた短編集。ドイツの民族衣装をめぐる不条理な離婚劇、42日間吐き続けた男の話、望遠レンズで女子学生の部屋を覗く大学生の物語など、一見普通に見える人々の意識の奥底から、得体の知れない何かが日常へとにじみ出てくる。フィクションか事実か、その境界線が意図的にぼかされているからこそ、読後も不思議な余韻が消えない。寂しくて、でも滑稽な、人間の本質に静かに触れる一冊。

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33おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2

おおきなかぶ、むずかしいアボカド 村上ラヂオ2

2011年刊行

3,922pt

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「どうでもいいようだけど、やっぱり読み過ごせない」エッセイ52編を収録した一冊。アボカドの食べ頃問題からアザラシのくちづけの味、ギリシャで遭遇した幽霊、ロシアと日本のかぶをめぐる昔話の意外な違いまで、小説家の引き出しから飛び出すエピソードは尽きない。人の悪口を書かない、言い訳や自慢をしない、時事ネタは避けるという独自のルールのもと、まるでマッサージのように心のこりをほぐす語り口が展開される。「頭からっぽで読める割に、うーんなるほどと唸ってしまう」と読者を唸らせる文章は、著者いわくビール会社が作るウーロン茶のようなもの。しかしその味わいは、誰かと心の深いところを担い合えるような、静かで豊かな余韻を残す。

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34村上ラヂオ

村上ラヂオ

2003年刊行

3,880pt

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雑誌ananに連載された50本のエッセイをまとめた一冊。柿ピーの黄金比率、コロッケパンをかじる至福のひととき、きんぴらを炒めるときの理想のBGM、そして体重計に寄せる哲学的考察まで、日常のささいなひとコマが独特の筆致で展開される。「しょうもないことがこんなにもおもしろくなるのか」と読者を驚かせる文章力はまさにプロの技。一方で、古い飛行機のエンジンが止まった瞬間の死の体感を綴ったエッセイのように、脆くも儚い日常の輪郭をくっきりと浮かび上がせる筆力も健在。重厚な小説とは異なる、力の抜けた語り口で綴られた作品集は、まるでソファに寝そべりながらラジオに耳を傾けるような心地よさをもたらす。

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35中国行きのスロウ・ボート

中国行きのスロウ・ボート

1997年刊行

3,872pt

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デビュー作で一躍注目を浴びた著者が放つ、記念すべき初の短編集。中国人との偶然の出会いを軸に青春の追憶と内なる魂の旅を描く表題作をはじめ、全七篇を収録。ニヒリズムとキザ一歩手前のセリフ、熱くなりすぎず揺らぎない芯を感じさせるクールで抑制された文体が随所に光る。芝刈りというシンプルな労働を通じて世界と向き合う青年を描いた「午後の最後の芝生」は、読者から特に支持を集める一篇。脈絡のない発想の飛躍と、独特のリズムが心地よく、意味不明だけど惹かれる、と評される独自の世界観はこの頃からすでに確立されている。

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36ラオスにいったい何があるというんですか?

ラオスにいったい何があるというんですか?

2015年刊行

3,745pt

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世界各地を旅した記録を集めた紀行文集。ボストン、アイスランド、ギリシャの島々、フィンランド、ラオス、イタリアのトスカナ、そして熊本と、著者が実際に足を運んだ土地の風景や食、人々との交流が丁寧に綴られている。旅先で何もかもがうまくいったら、それは旅行じゃない、という言葉が示すように、不完全さも含めた旅の本質が描かれている。「旅をしている人にだけ見えてくる風景がある」という視点のもと、著者のフィルターを通して各地の魅力が色鮮やかに立ち上がる。小説の舞台や執筆の地への再訪も多く、作品世界と地続きの旅情が随所に漂う。特徴的な比喩と軽妙なユーモアを交えながら、スローな時間の流れを尊ぶ著者ならではの旅の哲学が、静かに伝わってくる一冊。

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37パン屋再襲撃

パン屋再襲撃

1986年刊行

3,711pt

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深夜、堪えがたい空腹に目覚めた夫婦が、過去の「パン屋襲撃」にまつわる呪いを解くため、午前2時半の東京へ繰り出す表題作をはじめ、初期の傑作6篇を収録した短編集。街のシンボルだった象と飼育員が忽然と姿を消す「象の消滅」、後の大作「ねじまき鳥クロニクル」の原型となった作品など、日常の中にするりと紛れ込む不条理と幻想が、巧みな比喩と独特のユーモアで描かれる。「この意味のわからなさがツボる」と読者に言わしめる、やれやれな主人公と強引に物語を動かす個性的な人物たちが織りなす、わけのわからないひどく魅力的な世界。

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38やがて哀しき外国語

やがて哀しき外国語

1994年刊行

3,690pt

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名だたる作家フィッツジェラルドの母校、プリンストン大学に招かれた著者が、二年にわたってアメリカでの生活を日本の読者に綴った十六通のエッセイ集。大学村に漂う独特のスノビズム、フェミニズムをめぐる考察、本場でジャズについて思うこと、そして異国で深く悩まされる床屋問題まで、日常の断片を独自の視点で切り取る。「異文化の中に身を置くと、自分という輪郭がむしろくっきりと見えてくる」という感覚が、軽やかな文体の奥にしっかりと息づいている。外国語がすらすら話せても、個人と個人の気持ちがすんなり通じ合うわけではない、という言語への深い問いかけが、タイトルに込められた哀愁と重なる。国境の南、太陽の西とねじまき鳥クロニクル、二作の長編が生まれた時期の著者の思索が随所に滲む一冊。

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39象の消滅 短篇選集 1980-1991

象の消滅 短篇選集 1980-1991

2005年刊行

3,643pt

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英語圏で高い評価を受けたのち、日本に逆輸入されたという異色の経緯を持つ初期短篇選集です。夜中に突然現れる小人族、地中から這い出る緑色の獣、ある朝忽然と姿を消した象と飼育員など、現実と非現実の境界が溶け出すような17の物語が収められています。集団心理の恐ろしさを静かに描いた「沈黙」は一部の教科書にも採用されており、「この作品を読むことで生きていくことへの理解が一メモリ回る」と評する読者もいます。著者みずから英語版をもとに新たに翻訳した「レーダーホーゼン」も収録。初期作品の本質に迫る書き下ろしエッセイも加わり、作家の創作の源泉を垣間見ることができる一冊です。

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40辺境・近境

辺境・近境

2000年刊行

3,468pt

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モンゴルの草原、砂埃舞うメキシコ、北米大陸横断、瀬戸内海の無人島。そして震災に見舞われた故郷・神戸。リュックを背負い、著者が1990年代に実際に足を運んだ七つの旅行記をまとめた一冊。讃岐うどんを食べ歩く軽妙な国内紀行から、暴漢対策に警官が乗り込んでくる長距離バスでのメキシコ南下、無人島で虫の大群に圧倒される体験まで、旅の振れ幅は驚くほど広い。なかでも読者に強い印象を残すのがノモンハン編。無数の命が散った戦場跡で、著者は得体の知れない身体の震えを覚える。風景と心象風景を紡ぎ合わせたような素朴で奥深い文体が、場所ごとに異なる土地の空気をそのまま届けてくれる。

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酷評10

TOTAL 1,392 reviews

41村上春樹 雑文集

村上春樹 雑文集

2011年刊行

3,441pt

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デビュー時の新人賞受賞スピーチから、伝説のエルサレム賞スピーチ「壁と卵」の日本語全文まで、単行本未収録・未発表の文章を一堂に集めた69編の雑文集。音楽論、翻訳論、人物評、結婚式の祝電、さらにはお蔵入りの超短篇小説まで、ジャンルを超えた多彩な文章が収められている。「もしここに硬い大きな壁があり、そこにぶつかって割れる卵があったとしたら、私は常に卵の側に立ちます」という言葉に象徴されるように、作家としての信念と覚悟が随所ににじみ出る。巻末には安西水丸と和田誠による解説対談も収録。小説とはひと味違う素顔を通じて、作家の内側に深く迫る一冊。

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TOTAL 1,205 reviews

42みみずくは黄昏に飛びたつ

みみずくは黄昏に飛びたつ

2019年刊行

3,377pt

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「ようこそ、村上さんの井戸へ」という言葉から始まる、計13時間に及ぶ超ロングインタビュー。十代から村上文学を愛読してきた作家が、初期エッセイから長編まですべての作品を精読し、その最深部へと鋭く迫る。少年期の記憶、意識と無意識、創作における「地下二階」の概念、フェミニズムへの視点、比喩や文体へのこだわり、そして死後のことまで。村上氏が忘れていた自作の細部まで問いただす熱量は圧巻で、「村上に聞いてみたいけど聞いていいのか」という質問を無邪気に投げつける姿が清々しい。カキフライを食べたくなるような文章を目指す、という言葉が象徴するように、文章と文体への揺るぎないこだわりが浮き彫りになる一冊。

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TOTAL 560 reviews

43サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3

サラダ好きのライオン 村上ラヂオ3

2012年刊行

3,359pt

TOTAL SCORE

日常の小さな発見から人生の深みへと広がる、52編のエッセイ集。走ることへの情熱、旅先で出会ったトマトの味、偽善とは何かという問いかけなど、話題は縦横無尽に広がる。「年をとるということを、いろんなものを失っていく過程と捉えるか、いろんなものを積み重ねていく過程と捉えるかで、人生のクオリティはずいぶん違ってくる」という言葉が静かに胸に刺さる。気楽なしゃべりのようでいて、時折放たれる鋭い視点に思わずハッとさせられる。大橋歩による銅版画イラストも、文章の世界観を優しく彩る。まるでハッピーターンのように、読後に独特の余韻が残る一冊。

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TOTAL 1,008 reviews

44雨天炎天

雨天炎天

1991年刊行

3,279pt

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女人禁制という言葉だけで想像を絶する、ギリシャ正教の聖地アトス。険しい山道を雨に打たれながら修道院から修道院へと歩き続けるギリシャ編と、若葉マークの四駆でボスフォラス海峡を越え、兵士と羊と埃が渦巻くトルコを三週間かけて一周するトルコ編の二部構成。質素すぎる食事に星をつけながら淡々とユーモラスに綴られる文体は、まさに小説を読むような異世界感をもたらす。読者が言う通り、これは面白さの対照的な違いが際立つ作品で、抱腹絶倒の男旅記録と称するにふさわしい。旅が本質的に空気を吸い込むことだと気づかせてくれる、タフでハードな紀行文。

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TOTAL 1,255 reviews

45村上さんのところ

村上さんのところ

2015年刊行

3,238pt

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世界中から寄せられた3万7465通もの質問に、119日間にわたって誠実に向き合った作家の姿が、この一冊に凝縮されています。恋愛や人間関係、仕事の悩みから、小説の書き方、音楽、社会問題、そして猫まで、テーマは縦横無尽に広がります。ふざけた質問にはユーモアたっぷりに、深刻な悩みには真摯に寄り添う回答からは、作家の素顔と誠実な人柄がにじみ出ています。読者からは「何度でも読み返したい人生の常備薬」とも称され、シュールで可愛らしいフジモトマサルのイラストも添えられた、笑えて、泣けて、考えさせられる選りすぐりの473通が収録されています。

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普通177
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TOTAL 805 reviews

46TVピープル

TVピープル

1990年刊行

3,221pt

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現実から少しだけズレた世界を描く、六つの短編集。ある日曜日の夕方、突如として部屋に現れた謎の小さな訪問者たちがテレビを持ち込む表題作をはじめ、十七日間眠れないまま目が冴え続ける女性の物語、夢と現実の境界が溶け合う恐怖、そして日常に潜む静かな喪失感が、読む者の足元をじわりと揺さぶる。読者からは、「まだ起きていない喪失を感じる怖さ」「日常が非日常に変わる時、人が変容するのが怖い」という言葉が寄せられており、解決しない結末が想像力をかき立てる。後の長編作品に繋がる人物や世界観も随所に顔を出し、不可解でありながらも確かな中毒性を持つ作品集。

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酷評31

TOTAL 2,265 reviews

47約束された場所で

約束された場所で

1998年刊行

3,203pt

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「癒し」を求めた人々が、なぜ未曾有の事件へと向かったのか。地下鉄サリン事件の被害者側を描いた前作に続き、本作ではオウム真理教の信者・元信者8人へのインタビューと、心理学者・河合隼雄との対話によって構成される。登場する人々は、社会に馴染めない特別な存在ではなく、ただ満たされない何かを抱えた、ごく普通の人々だ。「悪いやつって、そんなにたいしたことはできない」という河合の言葉が鋭く刺さる。あちら側とこちら側の境界線は、思いのほか薄い。現代社会の病理と、人間の純粋さが持つ危うさに静かに迫る、深く重い一冊。

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普通398
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酷評5

TOTAL 1,073 reviews

48
No image

村上さんのところ コンプリート版

2015年刊行

3,051pt

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以下、紹介文です。 --- 「3万7千通を超える質問が届いた、期間限定のウェブサイトがあった。」そこへ寄せられた質問に、著者が3か月半にわたり直接回答し続けたという、前代未聞のQ&Aプロジェクト。コンプリート版には、実に3716問すべての回答が完全収録されている。恋愛、仕事、家族、社会問題、猫、野球、そして人生の意味まで、テーマは縦横無尽に広がる。小説家としての顔とは異なる、ユーモアと誠実さが共存する人間としての素顔が、一問一答の積み重ねの中から自然と浮かび上がる。読者レビューにあるように、「本質を掴むようなアドバイスと、信じられないほどテキトーなアドバイスが混在する、滋味深い一冊。」という言葉がまさに言い得て妙で、軽妙なユーモアの中にこそ人生の警句が宿る。

絶賛293
好評221
普通138
不評17
酷評11

TOTAL 680 reviews

49村上朝日堂

村上朝日堂

1987年刊行

2,920pt

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ビールと豆腐とヤクルト・スワローズが好きで、蟻ととかげとフリオ・イグレシアスが嫌い。そんな著者の日常が、軽やかな筆致でつづられた生活コラム集。三十代前半の若き著者が、身近な題材をユーモラスに切り取ったエッセイは、「冷蔵庫の余り物でささっとつくったパスタ」のような、気取らない本質の味わいにあふれている。安西水丸によるほのぼのとしたイラストとの相乗効果が、読後感をさらに軽やかに彩る。巻末には文と絵の役割を逆転させた「逆転コラム」も収録。著者の文章が持つ「軽やかで満足度の高い読み味」は、このころからすでに健在だ。

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酷評16

TOTAL 1,189 reviews

50羊男のクリスマス

羊男のクリスマス

1985年刊行

2,749pt

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聖羊祭日に穴のあいたドーナツを食べた呪いで、クリスマスソングが作曲できなくなってしまった羊男。呪いを解くため、穴のあいていないねじりドーナツを手に、秘密の穴の底へと降りていきます。暗い穴を抜けた先には、なつかしい顔ぶれや不思議な住人たちが待ち受け、羊男の奇妙な冒険が始まります。呪いを解くための旅は、実はあたたかなクリスマスパーティーへの道のりでした。読者レビューでは、アリスインワンダーランドのような不思議な世界観と評され、夢か現実かわからなくなる感覚でも証拠は残っているという春樹氏ならではの余韻が楽しめます。お人好しで優しい羊男が、出会った人々に善意を尽くす姿は、クリスマスの持つ与え合うあたたかさを静かに伝えてくれます。

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好評285
普通764
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酷評11

TOTAL 1,373 reviews

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