透明な夜の香り
2020年刊行
10,424pt
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透明な夜の香り
古い洋館に暮らす調香師・小川朔は、どんな香りでも作り出せる天才だ。しかし彼の真の特異性は、人の汗や呼気から感情、健康状態、さらには嘘までをも嗅ぎ分けてしまう、人並み外れた嗅覚にある。そんな朔のもとに家事手伝いとして雇われた元書店員の一香は、風変わりな依頼人たちが次々と訪れるサロンの日常に溶け込みながら、朔が天才であるがゆえに深い孤独を抱えていることに気づき始める。読者からは、「頁から香りが立ち上ってくる意味がわかる」という声が相次ぐ本作。朔の声を「紺色の声」と表現するなど、嗅覚だけでなく色彩や音まで全感覚を揺さぶる描写が随所に光る。香りは脳の海馬に直接届いて永遠に記憶されるという言葉が示すとおり、一香が蓋をしてきた過去もまた、ある香りとともに少しずつほぐれていく。執着と愛着の違い、そして孤独の意味を問いかけながら、物語は静謐でありながら鮮烈な読後感へと着地する。
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